こんにちは、作編曲家・声楽バリトンの天野翔です。
私は普段、作編曲やレコーディングのお仕事をしていますが、音大受験生や現役の音大生に向けて個人レッスンをすることもあります。
これは、私がかつてレッスンをしていた現役音大生が、卒業後の進路選択に迷っていたときの話です。
彼は電子オルガン(エレクトーン)を専攻していたのですが、彼の大学では3年生からコース制のカリキュラムとなり、異なる学科のコースでも試験に合格すれば履修が可能となっていました。彼は作曲の勉強もしたいということで、電子オルガンと作曲の2つのコースを希望し、私のところに作編曲と和声を習いに来ていたのです。
その後、彼は見事コース選択試験に合格して、作曲の勉強もできることになったのですが、合格からしばらく経ったあるとき卒業後の進路に迷っている、との相談を受けました。
彼の話を聞いていると、迷いと不安が混じり合い、かなり混乱している状態です。
そこで私は、まず問題となっている部分を整理するために、彼に3つのことを実施してもらいました。
その場ですぐに答えを見つけることは難しいものもありましたが、これにより、彼は卒業後の進路に迷うことはなくなり、その結果、在学中にしておくべきことが明確になったそうです。
その3つのことを、順番にみていきましょう。
1、迷いの根本を突き止める
私は彼に、まず迷いの原因となっているものが何なのかを見つけるように言いました。
具体的には、以下のような流れで「それはなぜ?」と、自問自答を繰り返します。
1、「私は進路の選択に迷っている。」→それはなぜ?
2、「電子オルガンと作曲のどちらの道に進めば良いか分からない。」→それはなぜ?
3、「どちらの方が食べていけるのか分からない。」→それはなぜ?
4、「電子オルガンはずっとやってきたけど、もっと上手い人はたくさんいる。作曲は勉強を始めたばかりだから、作曲専攻の人たちには敵わないと思う。どちらにしても、音楽で生活していけるのか不安。」
ここで彼は、自分のレベルでは音楽で食べていけないのではないかという不安が原因で、進路に迷っていたことが分かりました。
さらに続けて「それはなぜ?」と掘り下げていきます。
5、「もっと上手くないと演奏家にはなれないだろうし、エレクトーン教室をやるにしても、場所もなければ生徒が集まるか分からない。作曲ではドラマや映画の音楽を作ってみたいけど、どうしたらそういう仕事ができるのか分からない。」→それはなぜ?
6、「活躍している先輩はみんな留学したり才能がある人だから僕には無理。エレクトーン教室だってどうやって始めたら良いか分からない。ドラマや映画の音楽を作りたいと言っても、周りにそんな仕事をしている人がいないからリアリティが持てない…。」
この段階で、最初にあった「進路の選択に迷っている」という漠然とした迷いから、かなり具体的なところまで掘り下げることができました。
結局、彼の迷いの根本にあったのは、自分の音楽スキルで食べていけるのだろうかという不安で、その不安の元となっているものは、どの仕事を始めるにしても、具体的にどこから手をつけたら良いのかを知らないことでした。
もし彼が、すでにどの道に進むのか決められていたのであれば、自ずとその仕事を始めるために必要なことを調べたり、具体的な行動を起こせたはずなのですが、漠然とした不安感に苛まれて身動きが取れなくなっていたようです。
2、目的を明確にする
そこで私は、「生活していけるかどうか」という観点をなくしたときに、彼が本当はどの道を進みたいのかを確認するために、以下の質問を投げかけました。
- あなたはなぜ音楽をしたいのですか?
「何をすべきなのか」や、「どうすべきなのか」よりも先に、「なぜすべきなのか」を見つめ、それに気づくことで、あなたが進むべき方向が定まります。
いわば目的とは方角なのです。あなたがどちらに向かって歩んでいくのか、その方角なのであって、到達点ではありません。
あなたが音楽大学を卒業した先に生きる人生を、どの方角に向かって進んでいくのか。これを明確にすることで初めて、目標を定め、計画を立て、実行していくことが可能になるのです。
また、音楽家にとって、この音楽の目的は、人生の目的とイコールとなります。
そしてあなたの人生の目的は、あなたの中にすでに存在しています。
いまはまだ気付いていないかもしれませんが、あなたはそれに気付くだけで良いのです。
いくつかの選択肢があるとき、人はそれらの中から最適なものを選ぼうとします。しかしその際に、あなたの中に人生の道筋を方向付ける指針となるものがなければ、結論を出すことはとても難しくなってしまいます。
私は、彼が人生の目的に気付けるよう、以下の質問も投げかけました。
1、あなたの人生に良い影響を与えた人を思い浮かべてください。その人のどんなところを見習いたいですか?
2、大切な人々に囲まれている20年後のあなたの姿を想像してください。周りにいる人たちは誰でしょう?そのときあなたは何をしていますか?
3、2つの超高層ビルの間に、幅15センチの鉄の橋が渡されているとします。何のためならそこを渡ってもよいと思いますか?お金?名声?兄弟?家族?
4、あなたが心から勇気づけられたときのことを書いてください。
5、もし1年が366日だったら、その増えた1日には何をしますか?
6、一日中、大きな図書館であなたの好きなことを勉強して過ごせるとしたら、何を勉強しますか?
7、あなたを何に例えたらよいか考えてください。花、歌、動物など何でも結構です。なぜそれを選択しましたか?
8、あなたにとってのヒーロー、またはヒロインを挙げてください。なぜその人を選んだのですか?
(引用元) http://www.franklinplanner.co.jp/learning/selfstudy/ss-15.html
これは、スティーブン・R・コヴィー博士が提唱した「7つの習慣」の中の「第二の習慣」として謳われている、「ミッション・ステートメント」を作成する際に、あなたの心の中にある価値観を見つけ出すための質問事項です。
これらの質問は、すぐに答えられるものではないでしょうし、考えが変わることもあるかと思います。
大切なのは、素直に、本心のままに答えることです。
この一連の問いかけから、彼は彼自身の音楽の目的=人生の目的を明確にすることができました。
3、自分の強みを見つける
結論から言うと、彼は現在、商業系の音楽制作会社に就職し、所属作家のサポートなどの仕事を任されています。
彼は、自らの価値観を見つけ出した結果、自分が必ずしもドラマや映画の音楽を作りたいというわけではなく、自分のスキルを商業系の音楽制作のために提供したいのだ、ということに気付いたのです。
私はいくつかの音楽制作会社を知っていたので、彼に紹介することはすぐにでもできたのですが、そのためにもまずは、彼の強みが何なのかを知る必要がありました。
それでは、強みとは一体何なのでしょうか?
強みとは、才能、経験、教育、スキルの4つが合わさったものです。あなたが、信じられないほど上手に、簡単に、いつでも行えることです。
しかし、本人にとっては当たり前にできてしまうことなので、自覚することはそう簡単ではありません。
アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーは以下のように言っています。
大半のアメリカ人は自分の強みを知らない。彼らに強みを聞いてみると、ぽかーんとするか、彼らが得意な教科を答える。しかしそれは間違った答えである。
そこで私は、彼に以下のワークを実施してもらい、自分の強みが何なのかを見つけてもらいました。
1、振り返ってみて、あなたがとても早くできたことは何ですか?周りの人たちよりも早くできたこと、とても早く理解できたことはありますか?
2、何人かの人が、同じタイプの質問やアドバイスを求めに来たことはありませんか?それはどんな分野でしたか?
3、沢山の人々が、あなたに助けを求めてくるものは何ですか?
4、あなたがやっていて最も生産性が上がることは何ですか?
5、どんな活動が、簡単にそして自然にできますか?
6、人生の中で、人々があなたを褒めてくれたのは何についてですか?
7、子供の頃に好きだった活動は何ですか?友達よりもうまくできたことはありますか?
これは、強みを見つけるワークのほんの一部ですが、これらの結果が、彼の強み、そして仕事上の競争優位を見つける鍵となります。
彼はこのワークの結果、様々なプロジェクトや作曲家のマネージメント力に長けていることを発見し、そしてその強みを発信していくことにより、現在の仕事に就けたのです。
あなたも自分の強みを発見し、それを活かして価値として世の中に提供していく方法を考えてみましょう。
自分の強みに基づいてビジネスを構築できたときのことを想像してみてください。
そこには、あなたがこれまで感じていたような不安や迷いは全くなく、毎日が楽しくワクワクした生活に変わっているでしょう。
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自分の”音楽的強み”を活かした音楽ビジネスを構築し、あなたの音楽スキルで生活して行く方法
この無料ウェブ講座では、他にも様々な方法を使って、あなたの強みを発見していきます。
そして、そのあなただけの音楽的強みを活かした音楽ビジネスをデザインするにはどうしたらいいのか、ということにも言及していきます。
先ほどもお伝えしたように、ほとんどの人は自分の持っている強みを自覚していませんし、それを基に音楽を仕事にしていく方法も知りません。だから、これを知ることが音楽で生活していくためにどれだけ近道になるか、あなたは想像できますか?
事実、あなたの音楽ビジネスの成功確率は、これまでにないぐらい上がるでしょう。
なぜなら、あなたは自らの決定的な成功要因を知ることになるからです。それを、あなたの音楽の目的=人生の目的に向かって進んでいくための足がかりにしてください。
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天野 翔
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